日本のほかの町が一気に近代化へと突き進むなか、江戸時代の面影をそのまま残してきた山あいの町。黒く渋い木造の商家が並ぶ通り、新酒のしるしに今も杉玉を吊るす造り酒屋、そして玄関先には北アルプス。そんな町です。
多くの人がまず驚くのがこれ。三之町筋は、本物とは思えないほど美しいんです。黒く渋い木造の町家がずらりと並び、格子窓が連なり、石畳のわきには細い水路が流れる。高山の宮大工たちが400年前、領主のために築いた通りが、ほとんど姿を変えずに残っています。造り酒屋は軒先に杉玉を吊るし、新酒ができたばかりのときは鮮やかな緑色、酒が熟成するにつれてゆっくり茶色へと変わっていく。デジタル看板では決して真似できない、生きたカレンダーです。
この町は標高573m、北アルプスに抱かれています。その高さゆえに、桜は東京より2週間遅く咲き、中部地方で最も雪が深く、地元のカメラマンが何時間も車を走らせて撮りに来るほどの紅葉が見られます。今回は、保存された古い町並みから、標高2,156mの森林限界の上まで運んでくれるゴンドラまで、高山の物語をまるごと伝える10のスポットを選びました。
1〜2日で自然にまわれる徒歩ルートの順に並べています
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上一之町・上二之町・上三之町という3本の通りがつながって、地元の人が「飛騨の小京都」と呼ぶ一帯をつくっています。黒く渋い木造のファサード、格子窓、浅い水路、杉玉を吊るした造り酒屋。ここはテーマパークではなく、今も生きている江戸時代そのものです。通り自体は公道で入場料はかかりません。個々の商店や酒蔵、小さな資料館は9:00頃に開いて17:00までに閉まります。
2
毎朝、宮川沿いの300mほどの区間に30〜40軒の屋台が並び、採れたてのりんご、山菜、味噌漬け、手縫いの工芸品、杉細工の小物などを売っています。売り手のほとんどは地元の農家や職人。りんごの屋台に立つエプロン姿のおばあちゃんたちは、きっと何十年もここに立ってきた人たちです。いちばん新鮮で人が少ない朝市を見たいなら、7:30までに来るのがおすすめ。
3
これは本当に貴重です。高山陣屋は、日本全国で唯一そのまま現存する江戸時代の代官所。1615年から1868年の明治維新まで、徳川幕府の地方代官の役所兼住まいとして、飛騨地方の年貢の取り立て、裁き、米蔵の記録などを担っていました。2世紀分の足袋にすり減ってつるつるになった床板の部屋を抜け、竹の床敷きと木の責め具が残る御白洲(取り調べの間)を通り、きれいに整えられた砂利の庭を望む代官の私室へと進んでいきます。
4
高山祭は年にたった2回の週末(4月14〜15日・10月9〜10日)しか開かれませんが、屋台会館なら祭屋台を一年じゅう見ることができます。屋台は2〜3階建ての金箔張りで、朱や黒の漆を塗り、緻密な彫刻と絹の幕で飾られた逸品。春の屋台11台、秋の屋台23台のうち、4台が入れ替わりで展示されます。1日4回(10:00・11:00・14:00・15:00)には10分間のからくり人形の実演があり、屋台の上の仕掛け人形が、絹糸と木のカムだけで操られて日本神話の名場面を演じます。
5
合掌造りの民家が見られるのは、白川郷だけではありません。急勾配の茅葺き屋根で、釘を1本も使わずに組まれ、重い雪を落とすために設計された建物です。飛騨の里では、飛騨地方各地から30棟以上の伝統家屋を、静かな池を囲む丘陵地に移築して並べています。いくつかの民家は内部も公開されていて、養蚕にも使われた多層構造の梁を見ることができます。風景は季節ごとにがらりと変わり、4月は桜、夏は深い緑、10月は紅葉、1月は雪に覆われた屋根が広がります。
6
高山を思い浮かべてと言われたら、多くの人が思い描くのがこの光景。朱塗りの橋と、その下を流れる宮川です。そのコントラストは季節ごとに美しく移ろい、4月は淡いピンクの桜が赤い橋を縁取り、10月は黄金色の紅葉、1月は真っ白な雪。渡るのは無料で、閉まることはありません。片方の岸はそのまま宮川朝市へ、もう片方は古い町並みへつながっています。渡りきるのに3分ほど。どの季節でも、しばらく立ち止まって眺める価値があります。
7
日本初の2階建てロープウェイは1970年に開業し、今も北アルプスを目の高さで眺めたい人たちを惹きつけています。ロープウェイは2区間に分かれていて、新穂高温泉から鍋平高原まで上がり、2本目のゴンドラで標高2,156mの西穂高口へ。晴れた日には、槍ヶ岳、穂高岳、飛騨山脈の稜線など、3,000m級の峰々を一望するパノラマが広がります。山頂には短い自然遊歩道があり、下る前にひと休みしたいなら山の上のレストランも。
8
高山駅から歩いて行ける距離にありながら、古い町並みに気を取られて見落とされがちなのが飛騨国分寺。日本の各国に国分寺を建てるよう命じた聖武天皇の勅令により、746年に創建されました。境内に立つ三重塔は15世紀のもので、国の重要文化財に指定されています。同じ境内には樹齢1,200年を超える大イチョウがそびえ、今を訪れる人と寺の創建とをつなぐ、生きた糸のような存在です。秋にはこの木が見事な黄金色に染まります。
9
地元の人が、町の静かな一面を案内するときに使う道。三之町筋の奥のはずれから始まり、杉やイチョウの森のなかを3.5kmにわたって縫うように進み、東山の中腹に並ぶ13の寺社 — 宗猷寺、大隆寺、白山神社など — を通って町へと戻ってきます。ルート上のどこも入場料はかかりません。道幅は歩きやすく広めで、案内表示もしっかり。桜の季節にはピンクの花びらが小径を覆い、秋には頭上の紅葉が深紅やオレンジに染まります。
10
高山の酒造りの伝統は、歩くだけで読み取れるかたちで三之町一帯に息づいています。入口の上に緑の杉玉が吊るされていれば、その奥には造り酒屋がある、という具合。杉玉は新酒ができたばかりのときは鮮やかな緑色で、酒が熟成するにつれてゆっくり茶色へと変わる、生きた仕込みの目印です。見学を歓迎し、無料または手頃な値段で試飲をさせてくれる酒蔵が、三之町筋にある舩坂酒造と平瀬酒造の2軒。地元・飛騨の酒は1本¥800〜3,000以上で、高山みやげの定番のひとつです。
主な見どころは2つのエリアに分かれます — 歩いてまわれる古い町並みと、少し離れた半日の小旅行
ツアー団体が来る前の7:00に宮川朝市からスタート。中橋を渡って三之町筋へ入り、味噌の試食と造り酒屋めぐりを。次に高山陣屋(8:45開館)、そして屋台会館(9:00開館 — 10:00のからくり実演を狙って)。最後に飛騨国分寺で締めくくり。合計で4〜5時間ほどです。
昼食のあと、「さるぼぼバス」で飛騨の里へ(10分・¥210)。中では1.5時間ほどみておきましょう。町へ戻り、東山遊歩道を歩きます(1.5時間)。締めくくりは三之町筋での夕食 — メインストリート沿いのお店で、飛騨牛(この地方の和牛)を味わって。
8:30頃に高山をバスで出発(濃飛バス・¥2,100)。10:00頃に新穂高着。ロープウェイに乗り、山頂の遊歩道を歩いて、山の上のレストランで昼食を。14:00頃に下りて、新穂高温泉(いくつかの公衆浴場あり)でひとっ風呂。帰りのバスは17:30〜18:00頃に高山に着きます。
白川郷は高山からバスで50分(濃飛または加越能・往復¥2,600)。合掌造りが並ぶユネスコ世界遺産の集落は、高山旅行の自然な延長線上にあります。午前に古い町並み、午後に白川郷、という日帰りの組み合わせでまわる人も多いです。集落の中に泊まれば、日帰り客が帰ったあと、ぐっと静かな時間を味わえます。