東京のミシュラン星付き店はパリより多い — でも一番心に残る食事は、ガード下の煙る焼き鳥横丁だったり、人生を変える一杯のラーメンだったり、一日中歩いたあと深夜3時にコンビニで買ったおにぎりだったりするものです。この街を離れる前に試したい、12品をご紹介します。
日本といえば寿司とラーメンだけ、と思っているなら — それは半分だけ正解です。東京は、ミュージシャンが楽譜を読むように「醤油ラーメン」と「とんこつラーメン」をはっきり区別する街で、しかもその両方が、比べようもないほど違うかたちでおいしいのです。たった1軒のラーメン店のために文句ひとつ言わず1時間並び、お気に入りのおにぎりを買うために地元の人が2駅先まで足を運び、年配の方が毎週金曜の夜、ガード下の路地の居酒屋へ通うのを週の習慣にしている — そんな街です。
正直なところ、東京での食事は高くつくとは限りません — ラーメンは1杯 ¥800〜1,200、焼き鳥は1本 ¥300〜400、デパ地下のお弁当は多くの国の4つ星レストランより上で、コンビニの ¥140 のおにぎりが、帰国後にいちばん長く語り草になることだってあります。東京は何を食べる街なのか、その答えとなる 12の料理・ジャンル を、まず試したいものから順に、実際に見つけられるおすすめ店とともに選びました。
この街ならではの度合いが高い順に — よそではちょっと味わえない料理たち
1
あの感覚、味わったことはありますか — 最初の一杯で思わず手が止まって、「どうしてうちの一杯はこんな味にならないんだろう」と自分に問いかけてしまうような。東京は、あらゆるスタイルのラーメンが10駅圏内で見つかる、世界で唯一の街です。醤油(澄んだしょうゆスープ)・とんこつ(濃厚な豚骨)・味噌(コクのある旨み)・塩(透き通った塩味)— どれもまったく別の世界。東京駅地下の東京ラーメンストリートには有名店8軒が一堂に会していて、ここから始めれば間違いありません。
2
東京の寿司は江戸前寿司 — シャリを軽く発酵させた酢で味付けし、東京湾の魚をしょうゆにつけずひと口ふた口で食べられるように仕込む、昔ながらのスタイルです。朝は築地場外市場から始めましょう — 寿司店は5:30から開き、魚はほんの数時間前に豊洲市場を出てきたばかり。回転寿司を試したいなら、スシローやうおべえが1皿 ¥130から。そして思いきって投資するなら、銀座のすきやばし次郎本店のおまかせは、一生に一度の体験です。
3
浅草大黒家の天ぷらは1887年からごま油で揚げられてきました — それだけで、この街が天ぷらにどれほど本気かが伝わります。冷たい衣を熱い油でさっと揚げ、衣は中の海鮮を包むワックスペーパーのように薄く透き通っています。だし・みりん・大根おろしの天つゆが、コクをすっきりまとめてくれます。大黒家の真骨頂は、つけて食べるのではなく、盛り付ける前に濃いめのつゆをトレー全体にまわしかけること。だから天ぷらの下のごはんが、香ばしくつゆを吸ってくれるのです。新宿の天ぷら つな八のような高級店では、目の前の鍋から一品ずつ揚げたてを出してくれて、まるでショーを見ているよう。
4
金曜の夕方6時、頭上をJRの電車が走り、炭火の煙とスーツ姿の男性たちのにぎやかな話し声で満ちた小さな路地を見つけたら — それが新宿の思い出横丁です。焼き鳥は炭火で焼く串刺しの鶏肉で、もも・ハツ・皮まであらゆる部位があり、甘辛いタレを塗るか、シンプルに塩を振っていただきます。1本 ¥300〜600、冷たいビールと一緒に何本か食べれば、付き合いが長かろうと浅かろうと、それはもう日本のデートそのものです。
5
東京が生み出したラーメンのスタイル — 冷たい(または常温の)太麺を、魚のだしと豚をたっぷり凝縮した熱々の濃厚スープと別々に出します。麺は普通のラーメンの2倍の太さ。スープにくぐらせ、一本一本にスープをからめてすすります。味わいは普通のラーメンの5〜6倍の濃さ。新宿の風雲児は、街でいちばん有名なつけ麺 鶏白湯(とりぱいたん)を出します。1時間以上待たないよう、午前11:30より前に店の前に並びましょう。
6
お好み焼きは多くの旅行者が知っていますが、もんじゃ焼きはとりわけ東京の料理 — だしベースのゆるい生地に具材(えび・いか・コーン・チーズ)を入れ、テーブルの熱い鉄板で自分で焼きます。具材の上にゆるい生地を流し入れ、ふちが固まるのを待ってから返し、中心が少しトロッと残るくらいにカリッとした層ができるまで焼きます。小さなヘラで鉄板から直接いただきます。月島(橋でつながった島で、都営大江戸線の月島駅)には、もんじゃ店が立ち並ぶ長い通りがあって、行くならここ一択です。
7
蕎麦は、外国の方が思っている以上に東京が大切にしている料理です。神田・神保町エリアには、職人が毎朝そば粉から手打ちする、何十年も続く蕎麦屋があります。冷たいざるそば — 竹のすのこに盛った麺を、わさびと刻みねぎを溶いた冷たいつゆにくぐらせる。麺はほんのり土の香りがして、世界のどんな麺とも違います。温かいかけそば — 丼の底が見えるほど澄んだ、軽やかなだしのスープに麺を入れて。良いお店はあまり遅くまで開いていないことが多いので、打ちたての麺を味わうなら午前10時より前に行きましょう。
8
居酒屋はレストランでもバーでもなく — その両方を兼ねた場所です。席に着いた瞬間、枝豆が無料か格安で出てきます。やわらかくてカリッとした唐揚げは、これまで試したどの国のフライドチキンよりおいしい。餃子・焼き鳥・甘い玉子焼き・味噌をのせた豆腐田楽 — どれもおいしくて、でも重すぎない。ビールやハイボールと一緒に味わう、これが毎週金曜の夜の東京で働く人たちの暮らしです。いちばんおすすめしたい街は、恵比寿横丁と新橋の2つ。
9
日本旅行で一番おいしかったのは、一日中歩いたあと深夜1時にセブンイレブンで買ったおにぎりだった — そう語った人がいます。大げさに聞こえるけれど、わかる気がします。日本のおにぎりは、まさにこのために選ばれた基準で炊いたお米を使っています。海苔は手に取るまでお米と別々に包まれていて(パッケージの1-2-3の順にはがします)、パリッとした状態を保ちます。主な具は梅干し・鮭・ツナマヨ、あるいは明太子をまぶした白ごはん。1個 ¥140〜175で、本当においしくて、旅の間は毎日試す価値があります。
玉子焼きは、だしの旨みがきいた、甘くてやわらかい巻き卵 — 串に刺して熱々をいただいたり、握り寿司としてごはんの上にのせたり。築地場外市場では10メートルおきに玉子焼き屋があって、なかでも一番のお店は店先に鉄板を出して、目の前で巻いてくれます。卵はふわふわでもっちりとした弾力があり、3〜4層に重なって、しつこくない甘さ。築地 玉子焼 Kanno(かんの)が有名で、1切れ ¥150〜200、一日の始まりにぴったりです。もっと甘さ控えめが好きなら、店員さんに「だし巻き玉子」と伝えてください。
もしラーメンに国籍があったなら、醤油ラーメンは生粋の江戸っ子 — 鶏ガラと、ちょうどよく熟成させた醤油でとった、澄んだ黄金色のスープ。とんこつより深く、それでいて軽やかな旨みで、一杯を最後まで飲み干せます。食べやすい細めの縮れ麺に、チャーシュー・メンマ・半分に切った温泉卵。東池袋の大勝軒はつけ麺の発祥の店ですが、醤油ラーメンも同じくらい絶品。初めてラーメンを試す人に、いちばん間違いのない一杯です。
東京のデパートの地下は、誰もが一度は行くべき場所 — 安いからではなく、おいしいからです。伊勢丹 新宿 B2や三越 銀座 B2には、スイーツ・おつまみ・お弁当・打ちたての蕎麦・高級ケーキ・惣菜のカウンターが揃っていて、ヨーロッパのスーパーよりはるかに上。閉店間際(19:30〜20:00ごろ)に行けば、その場で価格が20〜30%下がります。その夜の夕食も、おみやげのおやつも、一か所でまとめて買えます。和菓子もお忘れなく — 食べ物というより芸術品のような、美しい箱を選んでみてください。
おいしいものが、すべて歩いて回れる距離にある街と市場
古い魚市場は閉場しましたが、場外市場は今も営業中で、相変わらず良いです — 寿司店は5:30から開き、魚は毎朝豊洲から届きます。通りで巻きたての玉子焼き、串に刺した新鮮な海鮮、うに。どこかへ行く前に、朝のうちに立ち寄りましょう。市場の中心は観光客向け。脇の路地のお店こそ、通の行く場所です。
思い出横丁は新宿駅西口の向かい — 焼き鳥店と炭火の煙、夕方6時からの人々の話し声で満ちた、幅の狭い100メートルほどの路地で、50年変わらない昭和の雰囲気が残っています。JRのガード下、新橋と有楽町のあいだの有楽町 — 焼き鳥・刺身・牡蠣・生ビールが手ごろな価格で。お店の主の多くは、そこで40年続けています。
東京で最も古い街 — 食もお寺も。大黒家の天ぷらは130年続き、浅草寺周辺の路地には老舗の蕎麦屋が並び、人形焼は武者をかたどったあんこの和菓子、仲見世では通りの両側で地元のおやつを売っています。ツアー客が来る前の早い時間に来て、お寺の南側(雷門の左手)の路地を歩いてみてください。英語の看板のない小さなお店が、表のお店よりおいしかったりします。
橋でつながった小さな島で、大江戸線から歩いて行けます。200メートルほどのメインストリートに、もんじゃ店がずらりと並んでいます。どのお店もテーブルに鉄板があり、具材は生のまま出てきて、お店の人が作り方を教えてくれます — 熱い鉄板で自分で焼いていただきます。週末の夜は30〜45分待ちのお店もあります。海鮮が好きなら、いかとえびのもんじゃを。本当に変わったものが食べたいなら、キムチチーズバターもんじゃを試してみてください。
本格的な食事に投資したいなら、銀座は世界でもっともミシュラン店が密集している街です。おまかせ寿司・高級天ぷら・鉄板焼き・職人が目の前にいる割烹スタイルの和の個室。価格はおよそ ¥15,000〜から。どこも必ず事前予約を — 半年先より予約が難しいお店もあります。すきやばし次郎の銀座店を試したいなら、ホテル経由かTableallで予約しましょう。
観光客には知られていない名店が集まる、東京の若者の街が2つ。下北沢には日本のカレー屋、屈指のサードウェーブコーヒー、ホテルの部屋を抜け出したい人向けの居酒屋があります。高円寺には、店主が自ら考え出した個性的な味の麺類が。ここは、東京が本当に食べている街 — 観光客向けにしつらえた東京ではありません。
何十年も続いてきたお店 — 行く前に地図にピンを立てておきましょう
130年以上続く、お昼どきには毎日長い行列ができるお店 — 天ぷらは濃い茶色のごま油で揚げるので、よそのもっと淡い色の天ぷらとは見た目が違います。天つゆはつけて食べるのではなく、盛り付ける前にごはんのトレーにまわしかけるので、濃厚でごまの香り豊かな味わいに。天丼(天ぷらをのせたごはん)が看板メニューで、えび・いか・かぼちゃ・なすは、思っているより大きめ。本店は仲見世通りの近く、浅草駅1番出口から。11:00より前に行くか、30〜60分並びましょう。
日本語をひと言も話さずにラーメンを試したい人に — 一蘭にはオーダー用紙のシステムがあって、スープの濃さ・麺の固さ・辛さ・刻みねぎの量など5〜6項目を指定します。席は両側にすだれのある一人用ブース(味集中カウンター)で、丼は小さな窓から出てきます。最初の一杯は、次のひと口の前に思わず手が止まってしまうかもしれません。一蘭のとんこつはちょうどよい濃厚さで、重すぎず、替え玉(¥230)で麺を追加もできます。東京じゅうに店舗多数。
これのためだけにもう一度東京に戻ってきてもいい、と思わせる一杯 — 鶏白湯(とりぱいたん)のスープは、白く濁るまで何時間も煮込んだ濃厚な鶏のスープで、煮干しのほのかな酸味がきいています。麺は太めのストレートで、外は歯ごたえがあり中はやわらか。スープにくぐらせ、麺にスープをからめてすすります。チャーシューはとろけるようにやわらかく、温泉卵はゼリーのような食感。20〜30分以上待たないよう、午前11:30より前に行きましょう。いちばん行列が長いのは昼12時から13時です。
朝5時に並んで7時の朝食を待つ — どうかしていると思うかもしれませんが、ここで食べた人は1分の価値もあると言います。職人がその日いちばん新鮮な魚を選ぶおまかせセットは10〜12貫、職人の目の前のカウンターでいただいて ¥4,000〜5,000。ミシュランの星付き寿司ではありませんが、魚はずっと高いお店より新鮮です。行列が長すぎるときは、隣の大和寿司を。こちらも同じくらいおいしいです。
東京で今も営業している最古のおにぎり店 — 1954年創業。手で握ったおにぎりは、一つひとつ毎朝仕入れる新鮮な海苔で巻かれ、きれいな三角形をしています。具は梅干し・鮭・たらこ・ツナのほか、季節のものも。テーブル席はないので、お持ち帰りにして、お店から5分の隅田川のほとりでいただきましょう。朝7時から開いていて、浅草寺を訪れる前の朝食にぴったりです。